不貞行為(不倫)の責任

不貞行為の一次的責任

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不倫慰謝料の請求をされたら

配偶者がいる者(夫婦の一方)とその交際相手、不貞行為(不倫)の第一次的な責任は誰が負うのでしょうか。

この点については、不貞行為による平穏な家庭生活の侵害は不貞に及んだ配偶者が一次的に責任を負うべきだとされています(平成16年9月3日東京地方裁判所判決)。

もっとも、不貞をされた配偶者に対して不貞をした2人は連帯債務の関係で責任を負うことになりますので(不真正連帯債務)、それぞれが慰謝料全額について支払義務を負います。

すなわち、不貞行為(不倫)の一次的責任といっても、あくまで不貞行為に及んだ2人の間での負担分の問題に過ぎません。

なお、請求者が不貞をした夫婦の一方に対する損害賠償をせずに許しているような場合には、交際相手に対して認められる慰謝料の金額について減額要素となる場合があります(平成16年8月31日東京地方裁判所判決など)。

 

夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者に対する離婚に伴う慰謝料請求の可否

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不倫慰謝料の請求をされたら

平成31年2月19日、最高裁で以下のような判決が出されています。

(夫婦の一方は、他方に対し、その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができるところ、夫婦間ではなく、夫婦の一方が、他方と不貞関係にあった第三者に対して、離婚に伴う慰謝料を請求する事案。)

夫婦が離婚するに至るまでの経緯は、当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である。

したがって、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。

第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。

以上によれば、夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、上記特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。

 

配偶者に対し慰謝料の支払債務を免除した場合

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慰謝料の支払免除

不貞行為(不倫)による慰謝料の支払義務は、不貞行為をした配偶者とその交際相手との連帯債務(不真正連帯債務)となります。

この場合、請求者(不貞行為をされた配偶者)がもう一方の配偶者(不貞行為をした配偶者)に対する慰謝料の支払義務を免除した場合、交際相手の慰謝料の支払義務は免除されるのでしょうか

最高裁判所平成6年11月24日判決において、「民法719条所定の共同不法行為者が負担する損害賠償債務はいわゆる不真正連帯債務であって連帯債務ではないから、その損害賠償債務については連帯債務に関する同法437条の規定は適用されないものと解するのが相当である」と判断して、一方の配偶者に対して免除した場合でも交際相手に対する関係ではその債務を免除する意思を含むものではないから何らの効力を有しないとしました。

すなわち、一方配偶者に対する支払義務を免除した場合でも、交際相手に対しては引き続き慰謝料請求ができるということになります。

もっとも、免除はされないとしても、配偶者に対して慰謝料の支払義務を免除したという点は慰謝料の算定に当たって減額の考慮事由となりえます。

 

慰謝料支払義務者が自己破産し免責決定を得た場合

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慰謝料を支払う側が自己破産したら

不貞行為(不倫)をして判決で慰謝料の支払義務を負った場合、他の債務があるなどの理由でして自己破産手続をとるケースがあります。

自己破産手続において免責決定を受けた場合、慰謝料の支払義務は免除されるのでしょうか。

これは、破産法254条1項2号において「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」が非免責債権、すなわち免責されずにそのまま支払義務が残る債権として規定されていることにより問題となるものです。

この点については、下級審の裁判例ではほぼ一貫して「非免責債権には該当しない」との裁判例が出されています。

例えば、平成28年3月11日東京地方裁判所判決においては、「そこでいう『悪意』とは故意を超えた積極的な害意をいうものと解するのが相当である。(本件事情からすると)積極的な害意があったということはできない。(本件の)慰謝料請求権は破産法253号1項2号所定の非免責債権には該当しないといわざるを得ない。」と判断されています。

破産するほどの資力の人からの取り立ては困難であるため、実際に問題となるケースは少ないかもしれませんが、現在の運用上はよほど悪質性が高くない限り免責が認められるのが一般的と言えるでしょう。

 

嫌がらせ行為も慰謝料に加算された事例

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不貞相手が開き直って、不貞をされた側に嫌がらせ行為をした場合、不貞の慰謝料に加えてそうした嫌がらせ行為についての慰謝料の支払義務が発生することがあります。

裁判例では、不貞相手が不貞をされた配偶者に対し、昼夜を問わず電話し、勤務先にまで電話をして執拗に接触を図り、不貞配偶者との離婚を迫ったり、原告を中傷するような発言などを繰り返したことについて悪質な嫌がらせと認め、不貞慰謝料(150万円)とは別に嫌がらせ行為について50万円の慰謝料を認めた事例があります(東京地方裁判所平成28年8月30日判決)。