交際の結果、妊娠した場合、妊娠した女性には身体的・精神的・経済的にも大きな負担が生じることと思われます。
特に不倫関係の場合には男性が妊娠を知って中絶を強要したり、女性のもとを去るということもありえます。
結果として女性が妊娠中絶を選んだ場合、女性から何ら協力をしようとしない男性に対して取りうる手段はあるのでしょうか。
この点について、東京高等裁判所平成21年10月15日判決においては、合意で性交渉をし、合意で妊娠中絶手術を行った男女間において、男性が女性の身体的、精神的苦痛や経済的負担の不利益を軽減し、解消するための行為をしないことが不法行為に該当すると判断し、慰謝料100万円のほかに治療費等の2分の1を認めました。
同判決を踏まえると、合意の上で性交渉をして女性が妊娠した場合には、男性も女性に対して十分に寄り添う必要があるといえ、男性がそのような行動をきちんと取らなかった場合には女性から男性に対して慰謝料請求等が認められることになります。
性交渉には同意したけれども、避妊するように求めたのに応じてもらえず妊娠してしまった場合、妊娠した女性は男性に対して慰謝料などの請求をすることができるのでしょうか。
大阪地方裁判所令和6年7月19日判決では、女性が男性と2回ホテルで関係を持ち、備えてあった避妊具を男性につけるように求めたにもかかわらず男性が応じずに妊娠に至ったケースについて、「妊娠した場合の身体的・精神的負担は大きく、女性のみに生じる」「女性が性交渉に同意しているとしても、男性が避妊の求めに応じず行為を続けることは、女性の性的な自己決定権を侵害する」として、不法行為にあたると判断し、慰謝料等74万円の損害賠償を命じています。
このケースでは、女性が子の認知を求めると、男性は「自分は既婚者だ」と言って認知を拒んだという事情がありました。
地方裁判所の判決ではありますが、こうした事案の裁判例は未だ少なく、今後の裁判における先例となるとみられます。
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