ホステスや風俗店従業員の事例

風俗店従業員が訴えられた事例

不倫慰謝料に強い弁護士
不倫慰謝料の請求をされたら

 

 

夫と性的な関係を持ったとして風俗店で働いていた女性(風俗店従業員)が妻から訴えられた場合、その女性は不法行為に基づく損害賠償義務を負うのでしょうか。

業務行為として賠償義務を負わないことにはならないのでしょうか。

これについては、以下の判決が参考になります。

 

東京地方裁判所 令和3年1月18日判決

風俗店(ホテルヘルス店)で働いていた女性が、原告(妻)の夫と性的関係を持ったとして妻から訴えられた事例です。

夫はその女性を指名し、複数回にわたりホテルにおいて性的サービスを受けていました。

本件では「本件性的サービスの時点から被告(女性)と夫が本件店舗の従業員と利用客の関係を超える関係を有していたと推認することはできない。」「本件性的サービスは、性的サービスの提供を業務とする店舗の従業員と利用客という関係に基づいてなされたものであり、その際になされた性交渉も、被告と夫の従業員と利用客という関係を超えてなされたものとは認められない。」「風俗店の従業員と利用客との間で性交渉が行われることが、直ちに利用客とその配偶者との婚姻共同生活の平和を害するものとは解しがたく、仮に、婚姻共同生活の平和を害することがあるとしても、その程度は客観的に見て軽微である」「本件性的サービスの際の性交渉が、原告の婚姻共同生活の平和の維持を侵害し、不貞行為に当たり得る面があるとしても、それにより、原告に、金銭の支払いによらなければ慰藉されないほどの精神的苦痛が生じたものと認めるに足りない。」と判断され、原告である妻からの請求は棄却されました。

また、本件性的サービスの際の性交渉も、業務の一環またはその延長としてなされたと評価し得るとし、売春防止法などの法令上違法とされる可能性があることと、これが原告個人の権利を侵害するか否かということは別問題であるとも判示しています。

 

 

ホステスの枕営業が不法行為には該当しないと判断された事例

不倫慰謝料に強い弁護士
不倫慰謝料の請求をされたら

クラブのママやホステスが、自分を目当てとして定期的にクラブに通ってくれる客のためやそうした客を確保するために、営業活動の一環として、顧客と性交渉をする「枕営業」の場合については、以下の有名な判決が出ています。

 

東京地方裁判所 平成26年4月14日判決

クラブのママないしホステスが、顧客と性交渉を反復・継続したとしても、それが「枕営業」であると認められる場合には、売春婦の場合と同様に、顧客の性欲処理に商売として応じたにすぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから、そのことを知った妻が精神的苦痛を受けたとしても,当該妻に対する関係で、不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。

 

上記の判決には現時点でもいろいろな意見があり、同種の事案でも不法行為責任が裁判上で認められた案件も多いため、この判決をもって他の事例でも結論が同様になると判断するのは難しいと思われます。

 

ホステスの枕営業が不法行為に該当すると判断された事例

不倫慰謝料に強い弁護士
不倫慰謝料の請求をされたら

上記とは異なり、ホステスの枕営業が不法行為に該当すると判断された事例を紹介します。

 

東京地方裁判所 平成29年3月13日判決

原告(妻)が、夫とホステスの被告が旅行に行くなどして性的関係を持ったとして慰謝料を請求した事案で、「被告の行動は、原告らの夫婦関係に少なからず悪影響を与える不法行為を構成する」と判断し、慰謝料請求を認めました。

もっとも、被告の態様がことさら悪質とは言えないとして、慰謝料額は30万円としました。

 

東京地方裁判所 平成30年1月31日判決

原告である妻が、亡父とホステスである被告との不貞関係に基づく慰謝料請求を求めた事案で、「それがいわゆる『枕営業』と称されるものであったとしても、原告に対する婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益に対する侵害行為に該当する以上不法行為が成立するとして、110万円の慰謝料を認めました。

 

いわゆる「枕営業」については、業務外で関係を持った場合には不法行為を認められるケースが多いと言えますが、慰謝料額は低額に抑えられるケースが傾向にあると言えます。

この点については上級審の判断が見当たらないため、今後高等裁判所や最高裁判所の判断が待たれるところです。