裁判例(慰謝料)

以下に参考となる裁判例を掲載させていただきます。

あくまで一部を取り上げているだけですので、ご自身のケースにおいて主張の根拠として有効に利用できるかどうかについては、ご相談時に詳しくお話させていただきます。

また、もちろんここに挙げる裁判例はごく一部です。

実際に裁判で争う際には、個別の事案に応じて無数の裁判例から有利な裁判例を引用することになります。

 

不貞行為の一次的責任

配偶者がいる者(夫婦の一方)とその交際相手、不貞行為(不倫)の第一次的な責任は、誰が負うのでしょうか。

この点については、不貞行為による平穏な家庭生活の侵害は、不貞に及んだ配偶者が一次的に責任を負うべきだとされています(平成16年9月3日東京地方裁判所判決)。

もっとも、不貞をされた配偶者に対しては、不貞をした2人は連帯債務の関係で責任を負うことになりますので(不真正連帯債務)、それぞれが慰謝料全額について支払義務を負います。

すなわち、不貞行為の一次的責任といっても、あくまで不貞に及んだ2人の間での負担分の問題に過ぎません。

なお、請求者が不貞をした夫婦の一方に対する損害賠償をせずに許しているような場合には、交際相手に対して認められる慰謝料の金額について減額要素となる場合があります(平成16年8月31日東京地方裁判所判決)。

 

移送の申立

不貞行為に基づく慰謝料請求訴訟が地方裁判所に係属しており、一方で離婚訴訟が家庭裁判所に係属している場合、慰謝料請求訴訟を離婚訴訟と併合して審理を求めるために、地方裁判所から家庭裁判所へ移送の申し立てをすることができます(人事訴訟法第8条1項)。

この移送の申立に対しては,裁判所が両当事者からの意見を聞いて、移送するかしないかを決めます。

移送が認められる事例もあれば(平成25年2月20日横浜地方裁判所)、認められない事例もあり(平成28年1月15日東京地方裁判所決定)、個々の事情によって変わってくるようです。

なお、移送を認める決定、もしくは移送申立却下決定に対しては、即時抗告が認められておりますが、1週間で行わなければなりませんので、手続は急いで行う必要があります。

 

和解後の和解金不払いの場合の違約金

和解後に和解金を支払わなかったことから違約金として過大な金額を請求された場合、支払わなければならないのでしょうか。

例えば、慰謝料500万円で和解し、払わなかった場合には1000万円という違約金を払うという約束で和解し、和解金を支払わなかった場合には、1000万円払わなければならないのでしょうか。

裁判例では、不貞行為による損害賠償という本件事案の性質に照らし、社会通念上、容認することができない不当かつ不合理な合意とされ、そのような契約書は暴利行為ないし公序良俗に反し無効であると判断されました(東京地方裁判所平成21年1月28日判決)。

このように、あまりにも過大な金額が違約金とされている場合には、無効となる可能性が高いと言えます。

 

連絡接触禁止条項の違約金の有効性

再度の不貞行為を防止するため、連絡・接触等を禁止する条項を入れて示談(和解)するケースも多いですが、その金額が過大な場合にはどうなるのでしょうか。

裁判例では、違約金は損害賠償額の予定と推定されるから、その額については、連絡・接触等禁止が保護する利益の損害賠償の性格を有する限りで合理性を有し、著しく合理性を欠く部分は公序良俗に反するというべきであると判断されています(東京地方裁判所平成25年12月4日判決)。

 

不倫慰謝料の請求が信義則に反し権利の濫用として許されないケース

自分自身も不貞行為をしているにもかかわらず、配偶者あるいは元配偶者の不貞相手について慰謝料請求をすることはできるのでしょうか。

裁判例では、「自ら不貞行為をし、その後も背信行為を継続していながら、他方において、相手方らの不貞行為については、これを自己に対する法益侵害として損害賠償を求めることは、信義誠実の原則に反し、権利の濫用として許されないというべきである。」などと判断されています(東京地方裁判所平成18年2月14日判決)。

 

既婚者が独身と言って交際し、交際相手から慰謝料を請求されたケース

既婚者であるにもかかわらず、独身である、あるいは独身であるかのようにふるまって交際し肉体関係を持った場合、交際相手に対して慰謝料の支払義務を負うのでしょうか。

この点については、複数の裁判例があり、離婚するつもりがないにもかかわらず、独身とふるまった場合はもちろん、離婚して結婚するつもりであるようにふるまった場合でも、交際相手の人格権・貞操権(性的自由)を侵害するもので不法行為を構成し、慰謝料の支払義務が発生するとされています(東京地方裁判所平成30年1月19日判決、東京地方裁判所平成28年11月30日判決、東京地方裁判所平成28年6月29日判決ほか)。

もっとも、ケースバイケースですので、すべての事案で慰謝料が発生するとは言えませんが、多くの場合で慰謝料の支払義務が発生する可能性があります。

ただし、その慰謝料額は20万円~80万円程度であり、不貞行為の慰謝料額に比べると低額であると言えます。

 

夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者に対する離婚に伴う慰謝料請求の可否

平成31年2月19日、最高裁で以下のような判決が出されています。

(夫婦の一方は、他方に対し、その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができるところ、夫婦間ではなく、夫婦の一方が、他方と不貞関係にあった第三者に対して、離婚に伴う慰謝料を請求する事案。)

夫婦が離婚するに至るまでの経緯は、当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である。

したがって、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。

第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。

以上によれば、夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、上記特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。

 

調査費用(探偵・興信所等の費用)の負担について

不貞行為慰謝料を請求するにあたり、利用した興信所などの調査会社や探偵の費用などは、裁判で認められるのでしょうか。

これは、各裁判例によって判断が分かれています。

調査費用は証拠収集費用であるところ、いかなる証拠収集方法を選択するかは専ら請求するものの判断によるものであり、請求されるものらの不貞行為との間に相当因果関係は認められない(東京地方裁判所平成30年2月1日判決)などとして否定する判断が多いようです。

逆に、肯定する裁判例もあります。

また、相手方がわからないなど調査が必要不可欠であるような場合には調査費用を不貞行為と相当因果関係のある損害と認め、請求される側が当初から不貞行為を認めているような場合には調査費用を損害として認めないという判断もあります。

個別の事情によりケースバイケースと考えた方が良いと思われます。